あらすじ
旅の僧が大和国(現在の奈良県)在原寺を訪れると、在原業平の墓に水を手向ける女性がいます。女性は僧に、業平と幼馴染・紀有常の娘が、子どものころ、井筒(井戸の周囲の筒状の囲み)で背比べをしたことから始まった恋物語をし、さらに業平が他の女性のもとに通う時すらも無事を祈ったとも語ります。さらに女性自身が、実はその「井筒の女」、つまり有常の娘の霊だと告げて姿を消すのでした。
僧が寺で夜を過ごしていると、有常の娘は業平の装束を身に着けて再び現れます。業平と一体になりきった姿を井筒の水鏡に映し、夫との懐かしさに浸るのでした。
ポイント
平安時代以来「筒井筒の仲」といえば、幼馴染の恋の意味で通じた、人気の物語『伊勢物語』。それを原作に、狂おしいまでの愛を描いた世阿弥の秋の名作です。簡素な作り物で表現される二人の思い出の井戸。見込む主人公は心に何を思うのか、想像してご覧ください。
出演
シテ(里女/紀有常の娘) 片山九郎右衛門(かたやま くろうえもん)
能楽師シテ方観世流
片山家十世当主
重要無形文化財総合指定保持者
ワキ(旅の僧) 福王知登
アイ(里人) 善竹隆平
笛 野口亮
小鼓 清水晧祐
大鼓 山本哲也
後見 大槻文藏・赤松禎友
地謡 上田拓司・浦田保親・寺澤幸祐・武富康之・大江広祐・大槻裕一・浦田親良・武富晶太朗